介護福祉士は、介護業界で一つの目標となる国家資格です。
国家資格の中でも、比較的取得しやすい面もありますが、専門的な分野から出題されるため、介護福祉士国家試験を受験するにあたっては、十分な対策が必要となります。
受験資格も、3年以上の介護などの業務に携っている方や、福祉系高等学校卒業の方が対象となるため、誰でも簡単に受けられる訳ではありません。
しかし、介護福祉士の資格を保有していれば、多くの介護施設で資格手当が支給されたり、ケアマネ試験へのステップアップとなります。今後加速する高齢化社会にあたっても、将来の就業先にも困らないことがメリットとされます。
もし、介護業界で働いているなら、介護福祉士の資格取得にはデメリットはありません。
介護福祉士国家試験の概要について
介護福祉士国家試験は、毎年1月頃に筆記試験、毎年3月頃に実技試験が実施されます。
筆記試験については、以下の科目の対策が必要です。
- 人間の尊厳と自立
- 人間関係とコミュニケーション
- 社会の理解
- こころとからだのしくみ
- 発達と老化の理解
- 認知症の理解
- 障害の理解
- 医療的ケア
- 介護の基本
- コミュニケーション技術
- 生活支援技術
- 介護過程
- 総合問題
筆記試験は、マークシート形式にて専門的な問題が多く出題されるため、高校や大学で行ってきた勉強とは異なる一面もあります。
実技試験については、実務経験ルートでの受験の場合、「介護福祉士実務者研修」の修了、または「介護職員基礎研修」と「喀痰吸引等研修」の両方の修了で免除されます。
福祉系高等学校ルートで受験される方は、2009年度以降の入学者で新カリキュラムにて受講していれば、実技試験が免除されます。
そのため、筆記試験に合格しないと、実技試験を受けられない訳ではありません。ご注意ください。
介護福祉士の受験資格について
介護福祉士の受験資格を得るにあたって、主に2つの手段があります。
まず、介護などの業務に3年以上従事した経験があることです。
こちらについては、学歴・年齢・性別は不問ですので、介護とは関係のない高校・専門学校・大学を卒業していなくても受験資格を得られます。もちろん、正社員だけでなく、パートや嘱託職員としての介護業務の従事でも、受験が可能となっています。
ただし、介護業務経験3年に加えて、2022年現在は、実務者研修を6ヶ月以上450時間以上受けることが必須となりました。
2つ目の方法として、福祉系高等学校卒業の経歴があることです。
具体的には、高校または中等教育学校(専攻科も含む)にて、福祉に関する所定の教科目や単位を取って卒業すれば、自動的に介護福祉士の受験資格を得られます。
そのため、介護福祉士の資格は、全くの違う業種からの転職者などは、すぐに資格取得ができない点はご注意ください。
介護福祉士国家試験の学習時間について
介護福祉士の国家試験に合格するための学習時間として、一般的には250時間以上が目安とされてます。
大学受験の最難関とされる東京大学への合格にあたっては、3,000時間が目安とされているのと比較すると、介護福祉士の国家資格取得には、あまり学習時間が必要ではないことがわかります。
250時間というと、平日に1時間、土日に3時間勉強すると考えると、最低でも6ヶ月以上あれば、確保できる時間です。
しかし、介護業務の経験が必要なことから、仕事との兼ね合いで学習時間の確保には、なかなか難しいということも考えられます。
そのため、介護福祉士国家試験の合格には、電車での通勤時間といった、 “スキマ時間”を活かした勉強が合格の鍵です。
資格取得のメリットとは?
介護福祉士の資格取得のメリットとして、まず、通常の給料に加えて、資格手当が支給されることが挙げられます。
資格手当は1ヶ月で支払われる額が微々たるものでも、1年、2年、3年と長期間経つにつれて、資格がない状態と比較すると、差が大きくなります。職場によるかもしれませんが、保有資格により処遇改善手当なども増額される場合もあります。
そのため、収入アップを考えている方であれば、介護福祉士の資格取得は、手軽にできる収入アップの手段として有効です。
また、将来的にも介護業界にずっと携りたい方であれば、キャリアアップのためにも、介護福祉士の資格取得は良い選択肢です。
もちろん、介護施設の管理職になるには、介護福祉士の資格を保有していると有利になります。
最後に、転職が有利になることも、介護福祉士の資格のメリットとして挙げられます。
こちらも、転職先の介護施設にて、”即戦力”をアピールできる手段にもなりますので、将来的に、違う地域で働きたい方なら、断然、介護福祉士の資格取得をおすすめします。
介護福祉士国家試験の合格点の基準とは?
介護福祉士国家試験の合格点の基準は、概ね75点を取っていれば問題ないとされています。
しかし、年度によって合格基準点が変わりますので、80点以上を取っていれば、ほとんど合格できると考えても差し障りがありません。
介護福祉士国家試験は、通常の試験とは異なり、100点満点ではなく、125点満点ですので、イメージするなら、60%以上の得点率があれば問題ありません。
ただし、各科目において、正解が1つもない科目があった場合、不合格となるため、介護福祉士国家試験の勉強にあたっては、どの分野も満遍なく勉強することが必須です。
もちろん、試験は年度によって難易度が変わることもありますので、試験対策はどのような問題でも安定して得点を取れる能力も必要です。
介護福祉士国家試験の今までの受験者数や合格率
介護福祉士国家試験の受験者数は、2015年(平成27年)度まで増加傾向にありましたが、2016年(平成28年度)以降は、実務者研修が義務付けられたため、受験者数が減ったため、合格者数も減っていますが、合格率は増加しています。
2016年度以降は、介護福祉士の国家試験受験資格を得るためには、介護業務の充実経験がある方は、経験3年に加えて、6ヶ月以上の実務者研修を受けることが必要となりました。
実際のところ、実務者研修を終えるのには手間がかかるということもあり、介護福祉士国家試験の受験者が半分以下になったのが現状です。
しかし、制度変更で受験者が減っても、過去と比較しても年々合格率が高まってきていますので、介護福祉士国家試験は難易度が変わってきたといっても問題ないでしょう。
まとめ
介護業務の従事者なら、介護福祉士の資格を取ることにはデメリットはありません。
しかし、学習時間は250時間以上が必要になることから、効率の良い方法で勉強したり、”スキマ時間”を勉強に当てたりするなどの工夫が必要です。
介護福祉士国家試験は、3年の実務経験と実務者研修の受講により、受験資格は限られていますが、他の国家試験と比べても、合格しやすい国家試験となるので、チャレンジする意義は大きいと言えます。